Time slip
ホグワーツの図書館には、不思議な本がたくさんある。
禁書の棚だけじゃなく、一般の本棚にも不思議な本がある。
セリーヤはその日、ハーマイオニーと一緒にハグリッドとバックビークの為に色々な資料を探していた。
ハーマイオニーは既に本の山に埋まっており、セリーヤも本棚をふらふら歩いて役に立つ本を探しているところだった。
その中で目を見引いたのは、小さな本。タイトルは書いていなかった。
まるで何年も誰も触っていないかのように、忘れ去られたようにおいてある。
セリーヤはその本を手に取った。
パラパラとページをめくったが、何も書いていない。
ただ、最後に、一言だけ書いてあった。
あなたを おつれしましょう
どこに、誰を?
そう思って、一度瞬きをし、眼を開けたとき、そこは図書館ではなかった。
もっと、ずっと狭い部屋で、男の子が目を見開いてこちらを見ている。
セリーヤも、その子を見て目を見開いた。
「………リドル?」
「……………お前、どこから入った?」
男の子はセリーヤをにらみつけた。
「何ものだ?何故僕の名前を知っている?説明しろ!」
「ちょ、ちょっと、聞いて、わたしにだってなんなのかさっぱり…」
「お前も僕を診察に来た医者か?僕はどこもおかしくなんてない!」
「リドル、ちょっと…」
「出て行け!!僕はおかしくなんてない!!」
「聞いてっていってるでしょう!!」
セリーヤが腰に手を当てて大声で言うと、リドルはちょっと吃驚したようで、黙った。
「わたしにだって解らないのよ!本を読んでたらここにいたんですもの!
びっくりさせて悪かったけど、わたしだって吃驚したのよ!」
「………………」
胡散臭そうに、男の子はセリーヤを見た。
「何故僕の名前を知っている」
「あー…えっと…知り合いに似てたの。同じ名前なんて不思議ねー」
恐らく、彼は過去のリドルなのだろう。だけど今ここでそんなことを言っても信じてはもらえまい。
「僕と同じ名前?僕の父親か?答えろ!」
「人に物頼んでるのに命令すんじゃないわよ!」
再び大声を出すと、リドルは顔をしかめた。
「ちょっと、そこ座りなさい!」
びしっと、セリーヤはベッドを指差した。
渋々、少年リドルはベッドに座る。
セリーヤも勝手に向いに腰掛けて、リドルを睨みつける。
「いい?人に口を聞くときは礼儀ってもんがあるわ!説明しろだの答えろだの、あなた王様にでもなったつもり?
いっと来ますけどね、そんなんじゃ誰も相手にしてくれなくなるわよ!あなたは偉くもなんともないんですからね!」
「僕は他の奴らとは違う!」
「同じです!!!」
リドルは目を見開いて、セリーヤを見た。
セリーヤは知らない事だが、リドルが信じてきた事を、あっさり否定された瞬間だった。
「僕の事を知りもしないくせに、偉そうな事を言うな!お前こそ何様のつもりだ!」
「あーら、少なくともあなたよりは人としてまともな部類にはいると思うわ!」
「なんだと!?人の部屋に勝手に入ってきたくせに!!」
「好きで入ったんじゃないわよ!」
「じゃあなんだっていうんだ!」
「しらないわよ!馬鹿!」
お互いににらみ合っていたが、ふと、セリーヤが笑い出す。
その顔を見て、リドルはわけがわからなそうな顔をした。
「ご、ごめんごめん、なんかね、思い出しちゃって」
「?」
「わたしの知り合いとも、よくこうやってケンカしたから。
ほんと、昔からこんなだったのね」
昔から、最悪な性格だったようだ、彼は。
それがなんだかおかしくて、当たり前で、笑ってしまう。
「………変なヤツだな」
「うっさいわよ」
「お前、名前は?」
「セリーヤ」
「ふぅん、セリーヤ、ね」
まじまじと、リドルはセリーヤの顔を見た。
「……何よ」
「顔もまぁ、悪くはない」
「すっごく失礼じゃない?」
「僕にこんな風にいう奴は初めてだ。僕はお前が気に入った。大人になったら結婚してやる」
「………は?」
きょとんとするセリーヤをよそに、リドルは得意げだった。
「今は指輪を持っていないからやれないが、手に入れたら渡してやる」
「それは……どうも」
「それまで他の男に取られないようにしろ。解ったか?」
「はぁ……」
満足気なリドルがなんだかおかしくて、苦笑する。
そして、瞬きをしたら、そこはまた図書館だった。
辺りを見回しても、当然リドルはいない。
手に持った本には、さっきとは別の言葉がかかれていた。
約束は 守るよ
なんのだろう?と思って、考えて、思わず「あ」と声が出た。
確かに、リドルから指輪を貰った、と。
あれは、本当にあったことだったのだろうか?
リドルはそれを覚えていたのだろうか?
答えは本に載っていないし、後日その本を探したけれど見つからなかった。
不思議ではあったけれど、悪い気はしなかった。
大人になったら結婚してやる、といったリドルは、なんだか子どもらしくて、可愛らしいと思ったから。
そんな事を本人にいったらどんな顔をするんだろうと、セリーヤはちょっと笑った。
「M&D」にて、5周年及び10万打記念企画でリクエストさせて頂きました。6周年&10万越えおめでとうございます! リドルが……っ、子供リドルが可愛いです……っ! 本編とも繋がっていて、読みながらニヤニヤしてしまいましたv どうもありがとうございます!
2010/04