ダンブルドアが、ホグワーツから追放された。
その噂は、瞬く間に学校中を駆け巡った。噂にはどんどん尾ひれが加わり、終いには、ダンブルドアがファッジをかぼちゃのお化けに変身させたなんて話が実しやかに囁かれたりした。
DAの秘密基地が暴かれた事で、その場におらずドラコ達と共に現れたアリスへと疑いの目が向いたりもしたが、それも一瞬の事だった。校長室に誰がいたのか、何が起こったのか、ファッジへの仕打ちに尾ひれが付いている他は、驚くほど正確な情報が出回っていた。当然、マリエッタ・エッジコムが密告者である事も広まり、アリスは容疑から外れた。
ドラコ、パンジー、アリスの三人は、サラを校長室へと連行するとアンブリッジの指示で他のメンバーを探しに行った。マリエッタ・エッジコムは今も医務室に入院中だ。自然、皆はハリーとサラに話を聞こうと集中した。
ただでさえ、OWLに向けて課題の増えた学年。エリとの関係という弱みを握ってからはなくなったものの、クリスマス休暇前は魔法薬学の追加課題も出されて、アニメーガスの訓練は大幅に遅れている。この上時間を取られるなんて、冗談ではない。
授業が終わるなり、サラは誰かに捕まる前にと脇目も振らず図書室へと逃げ込んだ。
「――サラ!」
図書室に入るなり呼び止められて、サラはぎくりと足を止めた。昨日の出来事を話して聞かせたりしていたら、勉強をする時間なんて無くなってしまう。
振り返った先にいたのは、アリスだった。サラはホッと息を吐く。アリスはサラの前まで来るなり、頭を下げた。
「サラ、昨日はごめんなさい……! 私、どうにも出来なくて……厨房に連絡を送ってみたりはしたけれど……」
「それじゃ、ドビーに知らせたのはアリスだったのね?」
いつもの練習中に、怯えた様子で「必要の部屋」へと現れたドビー。彼の連絡がなければ、アンブリッジ達はまさに皆が杖を振っている真っ只中に訪れた事だろう。今日が意思確認するための初日などと言うダンブルドアの詭弁も通らなかった。
「大丈夫。いや、ダンブルドアがいなくなった事とか、色々大丈夫ではないけど……アリスの事は、誰も恨んでないわ。その事については、大丈夫よ。もし何か言う人がいたら、直ぐに教えて。私が懲らしめてやるから」
「ハリー達は一緒じゃないの?」
アリスは、早口で問う。サラは肩をすくめた。
「置いて来ちゃった。昨日の事、色々な人が聞きたがるんだもの。悪いけど、ハリーに任せる事にして、私は課題を……」
「あなた達に伝えなきゃいけない事があって来たの。たぶん、ハリーが一番に狙われるわ。――ドラコには注意して」
サラは口をつぐみ、アリスを見つめる。
サラを捕らえたのは、ドラコだった。捕らえた時のあの表情からして、誰を追っているのか本人も捕まえるまで分かっていなかったようだが。
ドラコはサラに縄を掛けた。そして、それに驚いた自分がいた。
(――私は、ドラコに何を期待していた? ホグズミードの時のように、助けてくれるとでも思っていたの?)
彼は、敵だ。それは紛れもない事実だ。
彼の父親が祖母を殺した。その事を、ドラコは擁護する。インタビューで事実を告げたサラに、彼は何と言った? 父上を売った。そう言ったのだ、彼は。罪を非難されるべきものと思っていない。
「……サラ? 大丈夫?」
アリスの声に、サラは我に返る。
「え、ええ……何も問題ないわ。それで? えーと、何の話だったかしら」
「私達、尋問官親衛隊に選ばれたの。ドラコもよ。監督生以上の権限をアンブリッジから与えられていて、減点だって自由に出来る……ドラコが何をしようとするか、分かるでしょう?」
サラは踵を返すと、図書室を出て行った。
ハリー達は、大広間だ。授業からそのまま、昼食に向かっているだろう。
大広間には、ロンとハーマイオニーしかいなかった。
ハリーはフィルチに連れて行かれたらしい。アリスの警告を伝えに来たものの時すでに遅く、ハリー、ロン、ハーマイオニー、おまけに一緒にいたアーニーまで軒並みドラコに減点された後だった。
「あいつ、サラがいないのを見計らって来たんじゃないか? でも、サラを捕まえたのはマルフォイなんだよな? 何かあったの?」
「でも、良かったわ。サラも戻って来て。これでサラもアリバイがあるもの」
ロンの話題をあからさまにハーマイオニーが遮る。サラは首を傾げた。
「アリバイ?」
「フレッドとジョージが何か企んでいるみたいなの。しばらく、ここにいた方がいいわ……」
その時、何かが爆発するような大きな音が大広間の外から聞こえて来た。続けて二度、三度、繰り返し音は鳴り響く。玄関ホールの方からは、喧騒が流れ込んで来る。
大広間の生徒達も立ち上がり、恐々と玄関ホールへと向かう。外から入って来た生徒が何があったか友達に話し、それを聞いた友達や周囲の生徒は興味に駆られて大広間を飛び出して行く。
「僕たちも行く?」
ロンがハーマイオニーに問う。ハーマイオニーは教員席の方を確認し、うなずいた。
「今の時点でこれだけ大勢の中にいれば、もうアリバイは成立かしらね」
玄関ホールは、昼食に向かっていた生徒と、何が起こったのか見に来た生徒とで、身動きも取れない混雑だった。
しかし何が起こっているかは、直ぐに分かった。ドラゴンの形をした花火が天井を這い、巨大なネズミ花火が階段を上り下りしている。
花火は燃え尽きる様子もなく、その後も一日中爆音を轟かせ、アンブリッジとフィルチを疲弊させていた。
No.59
フレッドとジョージの花火が暴れ回るのは最高の一日だったが、それが終わると、次はスネイプの閉心術授業が待っていた。
相変わらず、進捗は芳しくない。これだけ色々な事があって、心を空にしろと言う方が無理な話だ。しかし当然、そんな事スネイプには何も関係なかった。もちろん、ヴォルデモートだって「最近色々あったから開心術はタンマ」なんて聞いてくれないだろう。
夕食後、サラはハリーと二人でスネイプの研究室へと向かった。地下への階段に辿り着く前に、チョウが後を追って来た。
「ハリー! えっと……」
ハリーを呼び止め、チョウは困ったようにサラを見た。
サラは動揺せずにはいられなかった。チョウはもちろん、ハリーと二人きりで話したいのだろう。ここは、サラが空気を読んで身を引くべきなのだろう。ハリーとチョウが二人きりになる事はどうでもいい。――サラは、一人でスネイプの所へ行かなければならないのか? ハリーは遅れるなどという伝言付きで?
サラは訴えかけるようにハリーを見上げる。
しかし、ハリーは非情だった。
「サラ。悪いけど、先に行っていてくれないかな? スネイプにも伝えてくれると助かるんだけど」
サラはうなずいたつもりだったが、出たのは言葉にならない呻き声だった。
とは言え、どうする事も出来ず、サラは重い足を引きずり、一人、地下への階段を下りて行った。
チョウ・チャンも、何も今、ハリーに話しかけなくても良いだろうに。ハリーも、急いでいるからと断れば良かったのに。スネイプの授業に遅刻すればどうなるかぐらい、分かっているだろうに。それを伝えたサラにだって、彼は存分に理不尽な八つ当たりをしてくれるだろう。そもそも、スネイプと二人きりにはならない、そう言う条件だったではないか。シリウスとの約束まであっさりと破るなんて――
友情より女を選んだハリーを恨みがましく思いながら、サラはスネイプの研究室へと辿り着いた。訪れたのがサラだけだと分かると、スネイプは苦々し気な顔をした。
「我輩は決して、暇な訳ではない。これは、ダンブルドアの命令だ。闇の帝王との戦いに必要な事であるから、時間を割いて教えてやっている。ポッターはそんな事も分からぬのか? それとも、ポッターの用事と言うのは、闇の帝王から身を守る事以上に大切なものだと言うのか?」
スネイプは、早速ネチネチとやりだした。そんな事、サラに聞かれたところで答えられるはずがない。
「本人に聞いたらどうですか」
サラはつっけんどんに答えた。スネイプの怒りを煽ってしまった事には直ぐ気付いたが、知った事か。遅れて来るハリーが悪いのだ。
「何だ、その態度は。君はポッターに忠告しなかったのかね?」
「先生こそ、お気を付けください。それとも、学校でも『ついうっかり』エリとのキスの事を話してしまった方が良いですか?」
こうなればもう、やけくそだ。サラは切り札の脅し文句を淡々と話す。
スネイプの顔に、嫌な笑みが浮かんだ。
「その時は、君が時を待っている仇よりも先に、アズカバンに放り込まれるかも知れんな? 誰が教えたのかと言う話になれば、芋蔓式にブラックやルーピンらの悪事も暴かれるかも知れん……それも良いだろう……初めてポッターの死を残念だと思う。悪事が明るみになる前に一人だけあの世に逃れてしまうとは……」
サラは口を真一文字に結び、スネイプを睨み付ける。
未登録のアニメーガスは、アズカバンに入れられるほどの罪なのだろうか? しかし、サラはシリウスやルーピンに教わった訳ではない。そんな事、絶対、起こりえない……。
「杖を構えろ。練習の成果を見る。――もっとも、練習していなければ成果も何もないと思うが」
スネイプは自分のこめかみに杖を当てる。スネイプの額から銀色の靄が出て来て、それを巻き取るようにして水盤へと入れた。そして、何の前兆もなく、サラへと杖を向けた。
「レジリメンス!」
小高い崖の上に、サラは立っていた。崖の下方では、打ち付けられた波が白く弾け散る。
サラの手には、ラベンダー色のカチューシャ。目の前には、優しく微笑む祖母。
グッと胸がつかえるような想いだった。目の前に、祖母がいる。また、こうして会えるなんて。
記憶の底から引き出された世界はあまりにも鮮明で、まるで時間が巻き戻ったかのような錯覚を覚える。
今この光景がスネイプによって引き出されたものだと言う事も、閉心術の訓練の事も、サラの頭からはすっぽりと抜け落ちてしまっていた。
おばあちゃんが、ここにいる。もう、何も苦しむ事はない――
「アバダ・ケダブラ」
つかの間の安寧は、冷たい声、そして緑の光によって砕かれた。
祖母の身体が、海へと落ちて行く――
ハリーは憤慨しながら、スネイプの研究室へと向かっていた。
マリエッタは、裏切り者だ。いくら友達とは言え、かばって、その上、ハーマイオニーのやり方を非難するなんて。そもそも、マリエッタ・エッジコムが裏切ったりさえしなければ、彼女の顔に密告者なんて文字は現れなかった。自業自得じゃないか――
こんな状態でスネイプの所に行けば、いつも以上に心への侵入を許す事になるだろう。そうは分かっていても、怒りを抑える事は出来なかった。
研究室へと近付くと、ガラスの割れる激しい音が聞こえて来た。もう始まっているようだ。スネイプもサラも、機嫌は最低だろう。ハリーの遅刻を、サラが上手くフォロー出来たとも思えない。
更に気分が落ち込むのを感じながら、ハリーは激しい物音の元へと近付いて行く。――ちょっと、長すぎやしないか? いつもなら、一発反撃して、サラも我に返って終わりになる。しかし今は、部屋を荒らす物音が途絶える事無く聞こえ続けていた。
ハリーは研究室の扉へと駆け寄り、開ける。部屋の中は酷い有様で、その中央にサラがうずくまっていた。
「――いやああああああ!!」
悲鳴が迸り、薬品棚のガラスが砕け散った。訓練の中、幾度となくサラに反撃されているスネイプは、素早く杖を降って自らへの攻撃を防いだ。
サラの暴走は留まるところを知らず、壁の薬品は次々と割れ、椅子や本が宙を飛び交う。飛んで来た大鍋を避けるようにして、ハリーは横倒しになった机の陰に飛び込んだ。
「サラ! 落ち着くんだ! 君は開心術をかけられただけだ! 何も起こっちゃいない!」
サラは頭を抱え、その場にへたり込む。目は見開かれ、焦点が定まらない。その顔には、恐怖と絶望の色が滲み出ていて、ハリーの言葉も届いていなかった。
同じ頃、ドラコはクラッブとゴイルを引き連れて、五階の廊下を歩いていた。グリフィンドール寮の入口が八階の太った夫人の肖像画だと言う事は、三年生の時のブラック侵入騒動で周知の事実だ。今も、夕飯帰りのグリフィンドール生四人を適当に理由を付けて減点して来たところだった。
残念ながら、ポッターはいなかったが。
まあ、いい。今夜は、教科書と合体させられた「ザ・クィブラー」の記事を入手する事が出来た。隠し持つ手口を一つ暴けただけでも、上々の成果だ。記事を取り上げられ「死喰人の子供のくせに」と罵倒して来たグリフィンドール生については、五十点も減点してやった。これで、彼らも懲りるだろう。
「でも、アンブリッジ先生は実際のところ、どう思ってるんだろう」
クラッブが不安そうに言った。
「記事が事実だと知れたら――」
「こんな記事、魔法省が相手にするもんか。父上がおっしゃるには……」
ガタン、と言う大きな物音にドラコの言葉は途切れた。ドラコはクラッブ、ゴイルと顔を見合わせる。
音は、トイレの方から聞こえていた。ガン、ガンと硬いものを叩くような音。チャプチャプ、ゴボゴボと言う水音。
ドラコは恐る恐る男子トイレへと近付く。ゴイルを振り返り、扉を開けるよう顎で指図する。ゴイルは恐る恐る、扉を開けた。……誰もいない。いや、音がしている。一番奥の個室だ。個室の扉は開いているが、誰かが出て来る様子はない。
クラッブとゴイルは尻込みしていた。不安や恐怖を悟られまいと、ドラコはずんずんと個室へと歩いて行く。個室には、蓋のしまった便器があるだけだった。何やらガタガタと揺れている。
ドラコはクラッブとゴイルを振り返り、そして、一気に開いた。
「うわああああああああああああ!?」
開くと同時に中から勢いよく何かが飛び出して来て、ドラコは悲鳴を上げながら横っ跳びになってそれを避けた。
飛び出て来たのは、人だった。スリザリンのローブを着た生徒だ。床へと転げ落ちた人物を見て、ドラコはその名前を叫んだ。
「モンタギュー!?」
クラッブとゴイルに目で合図し、モンタギューを助け起こさせる。モンタギューはびしょ濡れで、ヘトヘトに疲弊しきっていた。そして何より臭い。
「いったいどうしたんだ? こんな所で。どこに行ったのかと皆探してたんだぞ。誰にやられた?」
モンタギューは答えない。答えられそうにもなかった。
「スネイプ先生を呼んで来る。二人は、彼を医務室に運ぶんだ」
クラッブとゴイルに指示すると、ドラコは地下牢教室へと走って行った。
スネイプの研究室がある廊下まで来ると、何やら大きな物音が聞こえて来た。ガラスが割れるような音、大鍋が転がるような音、大きな家具がぶつかり合うような音。誰かの叫び声も聞こえる。
騒ぎは、研究室から聞こえていた。怪訝に思いながらも、ドラコは木の扉をそっと開いた。
部屋の中は、見るも無残な光景だった。
窓のない壁沿いに並ぶガラス棚はことごとく砕け、いつもは整然と並んでいる棚や机はあちこちで横倒しになっている。床には大鍋や秤が転がり、溢れた薬品の上で湯気を立てていた。
惨状の中心でうずくまる人物を見て、ドラコは何が起こっているのかを理解した。
「――サラ!」
倒壊した机を乗り越え、サラの元へと駆け寄る。サラは大きく肩を震わせ、息も上がっていた。
過呼吸のような荒い息を繰り返す彼女の傍らに膝をつき、その顔をのぞき込む。
「サラ、大丈――」
「――ルシウス・マルフォイ」
冷たく吐き出された父親の名前に、ドラコは凍りついたように動けなくなってしまった。
ルシウス・マルフォイ。彼が、サラの祖母を殺害した。――ドラコが、興味本位でリドルの日記に書き込んでしまったために。
サラは顔を上げる。彼女の目が、真っ直ぐにドラコを見つめる。その瞳孔は開き、光の悪戯か赤い光が過った気がした。
少し前までなら、目が合えばドギマギしたりはにかんだりしていたものだが、今はただ、恐怖心しか沸き起こらなかった。
怖い。
ここから、逃げ出したい。
サラの腕が、ドラコへと伸びる。ドラコはビクリと身をすくませたが、今にも逃げ出したい気持ちを全身全霊で抑えてその場に留まった。
……元はと言えば、彼女がこうなってしまったのは自分のせいなのだ。
サラの両手が、ドラコの首へと掛かる。ドラコはぎゅっと目を瞑った。
「――ステューピファイ!」
呪文を唱える声に、思わず目を開ける。
赤い閃光がサラを襲い、ドラコの首から細い指が離れる。サラは弾かれたように飛んで倒れ込み、動かなくなった。
振り返る間も無く、ドラコは胸倉を掴まれ無理矢理立たされた。ハリー・ポッターが、鬼気迫る表情でドラコを睨んでいた。
「サラを人殺しにする気か!?」
何も言葉が出なかった。
彼女が祖母を失ったのは、ドラコのせいだ。ドラコが、日記に書き込んだから。操られ、人質となってしまったから。ドラコさえいなければ、あのルシウスがヴォルデモート失脚後に殺人なんてリスクの高い真似をするはずがなかった。
彼女には、ドラコを恨む理由がある。彼女になら、殺されても仕方がない。全ては、ドラコが――
「手を放せ、ポッター。さもなければ、グリフィンドールから十点減点する」
静かに響き渡る低い声に、ドラコは我に返った。胸倉を掴んでいた手がぞんざいに放され、ふらりとヨタつきながらも何とか踏み止まる。そして、床に仰向けに倒れたままのサラへと目をやった。
「サラは――」
「……大丈夫。失神してるだけだ」
ポッターは少し驚いたようにドラコを見ながら、短く答えた。
いったい何があったのか。ポッターとサラはこんな所で何をしているのか。聞きたい事は山ほどあったがまとまらず、スネイプの質問の方が早かった。
「何か用があったのでは?」
「え……あ、そうだ……はい。モンタギューが見つかったんです。五階の、姿をくらます飾り棚で……」
「すぐに行こう。ポッター、ここで待っていろ。シャノンを起こして、彼女が散らかしたこの部屋を片付けておけ」
血も涙も無い指示を残し、スネイプはドラコについて来るように促す。
「あの……ポッターとサラは、ここで何を……」
「二人は、魔法薬学の補習に来ている」
ポッターは補習が必要なほど成績が酷いのか。いつもなら嬉々としてからかってやるところだが、今はとてもそんな気分にはなれなかった。
――サラを人殺しにする気か。
怒り露わに叫ばれたその言葉は頭の奥で響き続け、いつまでも離れなかった。
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第2部
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2017/08/11