「――で、こいつに蹴られた後はもう覚えてない」
エドの説明が終わる。
エド、アル、ヒューズ、アームストロング、美沙は考え込む。研究所にあったのは賢者の石の錬成陣。エドの予想はビンゴだったと言う訳だ。しかし、何のために? 人柱とは? あまりにも謎が多過ぎる。
ヒューズは顎に指を当て考えながら、ウロボロスのマークが書かれた紙を取り上げる。
「軍法会議所で犯罪リストでも漁れば、何か出てくるかもしれねーな」
「我輩はマルコー氏の下で石の研究に携わっていたと思われる者達を調べてみましょう」
「……私の足をやったのが、エンヴィーって奴」
車椅子に座った黒尾が、ゆっくりと言った。
アームストロングが車椅子を持って黒尾を迎えに行き、一同はエドの病室へと集まっていた。護衛の事もあったため、こちらの方が人が近寄りにくいのだ。ウィンリィはエドに頼まれ、汽車の切符を買いに行っている。
部屋にある全ての視線が、黒尾に集まっていた。黒尾は、ぎゅっと拳を握る。
「爪が伸びる方は、ラスト……私の、友達です」
「は……あんた、何言って……」
美沙は唖然とした表情。黒尾はエドの書いた似顔絵を見つめたまま、言った。
「最初は知らなかったんだよ。名前も違ったの聞いてたし。セントラルで、別シフトでバイトに入ってた事あったでしょ? その時に、知り合って……」
黒尾は、彼女と出会った経緯をヒューズらに説明する。ナンパされている所を助けた事、それからセントラルにいる間、しばしば会っていた事。旅をする中でも、たまに遭遇していた事。
「今でも私は、彼女と友達のつもりです。でも、何かとんでもない事に関わってるのは確かで……だから私、調べようと思って第五研究所に……」
「すると、黒尾もこいつらの事はよく分からない訳か……。研究所以外に奴らがやってた事は?」
「あ。それなら、リオールで――」
コンコンと言う音がして、黒尾は何気なく振り返る。そして、言葉を失った。
「失礼するよ」
そう言ってにこやかに入ってきたのは、腰にサーベルを下げ、立派な黒髭の生えた眼帯の男性。異世界から来た黒尾や美沙であろうとも、彼の顔ぐらいは知っている。
キング・ブラッドレイ。ここ、アメストリス国の大総統。
一同が戸惑う中、彼はお見舞いのメロンをエドに渡す。それから、黒尾と美沙の方を振り返った。
「君達がエルリック兄弟と旅していると言うお二人だね? なるほど、話に聞いた通りそっくりだ」
「えっ、あっ、初めまして! エドがお世話になって……」
咄嗟の事になるとやはり、二人の声は重なってしまう。
ブラッドレイは笑顔のまま、言った。
「私もソラリスとは、面識があってね」
黒尾の顔が凍てつく。――軍のトップ。大総統。まさか、彼が。
美沙はきょとんとしていた。
「ソラリス……?」
「店で見かけたそうでね。向こうは知らないかもしれないと言っておったが」
「店って……閣下、奥さんがいらっしゃるのでは?」
美沙は店の子の名前だと判断したらしい。ブラッドレイは笑って受け流す。
そして、アームストロングに問うた。軍上層部を深く探っているようだが、と。あまりにも唐突な質問。
「はっ!? あ……いやその……何故それを……」
「私の情報網を甘く見るな。そして、エドワード・エルリック君――賢者の石だね?」
図星を突く問いかけに、エドも表情を凍らせる。黒尾は彼のサーベルに視線を走らせる。彼は、エドの目の前。剣の達人でなくても、手にかけるのは容易だろう。何処まで知ったかと問う彼の言葉に、部屋の空気が凍りつく。
そして、彼は笑った。
「冗談だ! そう構えずとも良い!」
我々も軍部内の不穏な動きは、どうにかしたいと思っている。そう、ブラッドレイは言った。敵は常に我々の先を行っている。石の研究に携わっていた者達も、皆行方不明になっている。
あたかもこちら側であるかのように。
彼は、部屋に集まる面々を見回す。
「ヒューズ中佐、アームストロング少佐、エルリック兄弟、黒尾さん美沙さん。君達は信用に足る人物だと判断した。そして君達の身の安全のために命令する。
これ以上、この件に首を突っ込む事も、これを口外する事も許さん!! 誰が敵か味方かも判らぬこの状況で、何人も信用してはならん! 軍部内全て敵と思い、慎んで行動せよ! ――だが」
言って、彼はにっこりと笑う。
「時が来たら君達には存分に働いてもらうので、覚悟しておくように」
嵐のように唐突にやって来た彼は、これまた嵐のように唐突に去って行った。
皆が唖然とする中、黒尾は一人彼の言葉に含有される真意に顔を青くしていた。
既に先を行くラスト達の企み。命が惜しければ、探るな。口外するな。そしていずれは、自分達も彼らの駒となる。
『君達の身の安全のために命令する』
黒尾は、窓の外を呆然と見つめているエドとアルに目を向ける。彼らの事だ。話をすれば、まだなお探ろうとする事だろう。他の誰に止められたとしても。そしてそれは、彼ら自身の身の危険を意味する。
黒尾は膝の上で、ぎゅっと拳を握り締める。
――これ以上の情報を、エドやアルに漏らしてはならない。
No.18
駅まで見送りに来てくれたアームストロング、ブロッシュ、マリア、グレイシア、エリシアと別れを告げ、汽車は滑り出す。線路が曲線を描くと共に彼らの姿が見えなくなって、美沙は座席に座りなおした。隣で窓へと身を乗り出していたアルも、その大きな身体を引く。美沙の正面にはエド、その隣にウィンリィ。黒尾は、セントラルに残った。
「黒尾の退院ぐらい、待ってあげれば良かったのに」
「仕方ねーだろ。当の本人が、気にしないで行けって言うんだから」
エドは口を尖らせる。そうなのだ。黒尾自ら、まだ出発せずに留まると言い出した。黒尾の怪我は、足。もしかすると、歩く事は出来ても旅はまだ厳しいと判断したのかも知れない。
一方ウィンリィは、エドとアルの目的地の手前にある土地を目当てについて来た。機械鎧技師の聖地、ラッシュバレー。何度か、ウィンリィ自身の口から話を聞いた覚えがある。
美沙達の目的地はその先、エドとアルの師匠がいる町ダブリス。二人は、絶対師匠に殺されると嘆く。
「殺……あんた達の師匠って一体……」
唖然と言って、ウィンリィは苦笑する美沙に目を向けた。
「美沙は知ってるの?」
「ううん。二人から軽く話を聞いた事はあるけど、私も会うのは初めて」
ウィンリィは再びエドへと視線を移す。
「なんでまた急に師匠の所へ行こうなんて思ったの?」
ウィンリィの問いかけに、エドとアルは強くなりたいからと答える。身も心も、もっと強く。それが、一つ目の理由。
「二つ目は?」
「人体錬成について、師匠に訊く事!」
夕日に暮れる車窓の風景を見据えながら、エドはきっぱりと言い放った。師匠の下で、錬金術を学んだエドとアル。しかし、賢者の石や人体練成について尋ねた事は無かった。それを、思い切って聞いてみようと言うのだ。元の身体に戻る方法。美沙のような前例を知らないか。
「もうなりふり構ってらんねーや。師匠にぶっ殺される覚悟で訊いて……訊いて……」
エドの声は尻すぼみになって行く。そしてまた、アルと二人で短い人生だと嘆き出した。
「あー、もう……。一体どういう人なのよ、あんた達の師匠って」
美沙が聞いたのは「師匠に教えてもらった」「師匠に習っている頃に」と言うような話のみ。実際の所、彼の人柄も名前も聞いた事が無い。
「あ、そうだ! 元気の出るもの!」
ふと、思い出したようにウィンリィが声を上げた。鞄の中に手をやり、取り出したのは箱に入れられたアップルパイ。グレイシアが作ってくれたらしい。
「それにしても多いな」
「あはは。四人分作ってくれたみたい」
「僕の分も食べなよね、兄さん」
「う゛!! 病院での仕返しか、てめこのヤロー!」
「そうだね。ちょうどいいじゃない。いっぱい食べて、大きくならないと」
「美沙まで……!」
サクサクのパイ生地に噛り付く。りんごの程よい甘さが口の中に広がる。
「うん、美味い!」
エドが顔を綻ばせる。
「ヒューズさんの奥さんね、すっごい料理上手なんだよ。作り方教えてもらったから、アルが元の身体に戻ったら焼いてあげるね」
アルはワーイと両手を挙げて喜ぶ。
「そう言えば、アップルパイは作った事無いなあ……」
「じゃ、その時は美沙も一緒に作ろうよ。もちろん、黒尾も」
美沙は一瞬、言葉に詰まる。そして、微笑み頷いた。
「うん。一緒に作ろう。約束ね」
アルが元の身体に戻った時。その時はきっと、美沙が元の世界に戻る手段を手に入れる時だ。……この世界の皆との、別れの時。
帰りたい。だけど、エドやアル、ウィンリィ、旅をしながら出会った人々。皆と別れたくない。もしも帰る事が出来るのだとすれば、いずれ帰る日が来るのだとすれば。
美沙は、ヒューズの話をして笑い合う三人に目を向ける。
――いつまで、こうして皆と一緒にいられるのだろう。
エド達四人が旅立った翌日。黒尾は、重い空気の中にいた。軍服や喪服を着た人々の間を、一つの棺桶が粛々と運ばれて行く。
マース・ヒューズ殉職。その訃報が入ったのは、あまりにも突然だった。
何者かに銃殺されたらしい。場所は軍法会議所から少し歩いた所にある電話ボックス。エド達が発ったその晩の出来事だった。
墓石の間に新しく掘られた穴。棺が寝かされ、土が掛けられていく。
静まり返った墓場に、小さな女の子の声が響いた。
「いやだよ……そんなことしたら、パパおしごとできなくなっちゃうよ……。パパ、おしごといっぱいあるって言ってたもん」
ヒューズから写真で何度か見せてもらった女の子だった。女の子を抱き上げるのは、同じく写真に写っていた女性。
『うちの嫁さんと愛娘! 見る? 見る?』
仕事が忙しいと言っていたのに毎日のように見舞いに来て、妻と娘ののろけ話をして行くヒューズ。彼が、死んだ。本当にあまりにも唐突過ぎて、未だに実感が沸かない。
「いやだよ……うめないでよ……パパ……!!」
悲痛な叫び声に背を向け、黒尾は松葉杖をつきながらその場を後にする。
ブラッドレイ大総統が直々に警告に訪れ、その翌日に殺されたヒューズ。結局黒尾は、リオールと彼らの関わりをヒューズらには話さなかった。軍法会議所で犯罪者リストを漁ると言っていた。何か、不味い資料でも見つけてしまったのだろうか。
賢者の石に隠された謎を明かすため、調査に協力してくれたヒューズ。もしもそれが原因だったならば、彼の死は黒尾達が巻き込んでしまったせい――
「足はもういいのかしら?」
掛けられた声に、黒尾は振り返る。
出会った頃と同じ、首元まで隠れたハイネックの中華風ドレス。黒に身を包んだその姿は、葬儀場において、自然と回りに溶け込んでいた。
「よく……は、なさそうね。それであの坊や達にもついて行かずに残ったのかしら」
「まあ、それも理由の一つ。杖無しでも歩ける事は歩けるんだけどね。負担掛けると、治り悪くなるから」
「大体予想は付くけど……もう一つは」
「あんた達の動向を追うため」
ラストは、深く溜息を吐く。額に手を当て、言った。
「全く懲りてないのね」
「私これでも、執念深いの。知らなかった?」
ニヤリと笑って言い、そしてふっと黒尾はその笑みを崩す。
「一つだけ……訊いてもいいかな」
「答えられるかは、内容次第ね」
ラストは腕を組み、通りかかる喪服姿の者達を目で追う。
黒尾はぎゅっと拳を握り締める。
「ヒューズ中佐が殺されたのは……あんた達に近付き過ぎたせい……?」
キッとラストを見据える。ラストは横目で黒尾を見た。何の感情も無い、その表情。再び視線を外し、ラストは淡々とした声を発した。
「……ええ。そうね」
黒尾は俯き、下唇を噛む。
――ああ、やはり。
黒尾達が巻き込んでしまったのだ。黒尾達が賢者の石や第五研究所の事を彼に話したりしなければ、彼が死ぬ事は無かった。
墓場で聞いた彼の娘の泣き声が、脳裏に蘇る。幼い故に、父親の死が理解出来ないのだろう。「埋めないで」と泣いていた女の子。
「念を押さなくても、その様子なら心得ていそうね」
「余計なことを話せば、また犠牲者を増やす事になるって言うんでしょう……」
「……」
冷たい風が、二人の間を吹き抜けて行く。
葬儀が終わったのか、帰路を辿る喪服の者達が増えて来ていた。
ふいと、ラストは背を向ける。物言わぬまま、彼女はその場を立ち去って行った。
……何故、こうなってしまったのだろう。
元の世界に帰りたい。エドやアルの身体が元に戻るように。初めはただ、それだけだった。
錬金術で失ったものは、錬金術で取り戻そう。真理の扉に代価が必要だと言うならば、その等価交換の法則を無視すると言う完全な物体「賢者の石」が手に入れば良いのではないだろうか。そう提案したのは、エドだったかアルだったか。
しかし、賢者の石は非人道的な製造手段を要する代物であった。それが実行されていたのではないかとされる、第五研究所。黒尾達が忍び込んで、ヒューズ達が関連資料を漁って。――そしてヒューズだけ、ラストらの望まない所まで手が届いてしまった。
「もう……やんなっちゃうなあ……」
ホテルのソファに横たわり、黒尾は片手で顔を覆う。
犠牲者を出してまで元の世界に戻って、何になると言うのか。この世界には、エドもアルもウィンリィもいる。ピナコも軍の者達も好くしてくれる。マスタングの紹介で、食い扶持だってある。ここで生活して行く基盤は出来上がっているのだ。後はただ、黒尾がそれを永久のものとして受け入れるだけ。
しかし諦めかけると、瞼の裏に鎧の身体と鋼の義手義足が浮かび上がる。黒尾は兎も角、彼らの身体まで諦める事は出来ない。それに、どんなに脅されようともラストらの企みを放置する訳にもいかない。
ただ、誰にも話さなければ……それだけで、これ以上の犠牲を防ぐ事が出来るだろうか?
コンコン、と扉を叩く音がして黒尾は上体を起こす。掛かった声は、ホテルの従業員のものだった。
「黒尾さん。お電話ですよ」
「やあ。突然呼び出して済まなかったね」
街灯の下、黒いコートに身を包んだ男性が軽く片手を上げる。
黒尾は履き慣れないブーツに蹴躓きそうになりながらも、彼の元へと小走りに駆け寄った。
「お待たせしてすみません、マスタング大佐」
「私も今来たところだよ。今日は一段と綺麗だね」
黒尾は肩を竦めて笑う。
「そりゃ、大佐と並んで見劣りしたら嫌ですからね。頑張ってお洒落してみました。食事に行くのに、まさか軍服ではいらっしゃらないでしょうし」
電話は、マスタングからのものだった。突然だが、食事に行かないか。奢りだと言うその話に、黒尾は二つ返事で乗った。持ち合わせの無かった衣服と言う出費は出たが、服など今後も着回せるし、そうでなくともマスタンメニューを頼み、グなら相応の場所が期待できる。
予想通り、マスタングに連れられて来た店は黒尾一人ならば絶対に入らないであろう雰囲気の場所だった。
「高そう……良いんですか? 本当に」
「もちろん。好きな物を頼んでくれていいよ。お酒は飲めるかい?」
「少しなら……」
頼んだメニューを待ちながら、黒尾はマスタングに話を振る。
「セントラルにいらしたのは、ヒューズ中……准将の葬儀で?」
「ああ……まあね」
「彼の事は、本当に残念でした……。エド達に、どう伝えたら良いのか……まだ美沙にも連絡出来ないでいるんです」
「まあ……そう急ぐ事も無いだろう」
彼は伏し目がちに話す。
黒尾は話題を変えるように、辺りをきょろきょろと見回した。
「それにしても素敵なお店ですね! いつもこう言う所へいらしてるんですか?」
「いつもと言う訳ではないけどね。忙しかったりすると、食事なんて適当に済ませてしまう事も多いから」
「駄目ですよ、栄養はちゃんと摂らないと。軍人さんって、体力勝負なんでしょうし」
「ははは。肝に銘じておくよ」
その後は他愛も無い話で、時間は過ぎて行った。リザも共にセントラルへ来ているそうで誤魔化すのが大変だったと言う話、ハボックに彼女が出来たらしいと言う話、その他軍部での話や町の噂など、マスタングの話は豊富で尽きなかった。美沙も、旅先で出会った人々や悪事を暴いた話などを話して聞かせる。
「二人とも――特にエドってば、いっつも無茶ばかりして……」
「それは、君もあまり他人の事を言えないだろう。珍しいじゃないか。入院していたんだって? もう大丈夫なのかい?」
「あ……はは、まあ。一応、歩けるまでには治りました」
「と言う事は、足を? どうしてまた」
「ちょっと、転んじゃって」
黒尾は苦笑する。マスタングは、笑っていなかった。
「時に、君達の探し物について、何か手掛かりは得られたのかね?」
黒尾は目を見開いて、マスタングを見つめ返す。黒尾達の探し物――賢者の石。
「いえ。そう簡単にはいきませんよ」
黒尾は静かに答え、デザートを口に運ぶ。
彼はまだ、黒尾を見据えていた。
「軍に所属していない君にこれを訊くのも妙な話かもしれないが、ヒューズを殺害した者達について、何か聞いている事はないかね?」
黒尾は食事する手を止め、まじまじとマスタングを見つめた。鋭い眼光。彼は聞いたのだ。ヒューズが知ってはならぬ事に手を伸ばしてしまった事、犯人は複数である事、そして軍上層部が関わっている事。口止めにより、詳細な情報は得られなかった。――恐らく、ヒントを与えたのはアームストロングか。
黒尾は国家錬金術師でもなければ、軍属でもない。エドの連れと言う事で誤魔化しているが、正式にはこの国の者でさえない。アメストリス軍の命令を聞く義務は、無い。
しかし、黒尾とて口を割る訳にはいかなかった。
黒尾は深々と、頭を下げる。
「すみません。私はお役に立てません……」
「否定はしないんだな。ならば何故――」
黒尾は顔を上げ、肩を竦めて苦笑した。
「大佐にとってヒューズ准将が大切なご友人であるように、私にも大切な人達はいるんです」
マスタングは無言で黒尾を見据えていたが、やがてフッと表情を和らげた。
「そうか……すまない。妙な話を聞いたな」
「いいえ」
黒尾は微笑む。
その後は再び、当たり障りの無い話へと戻って行った。
エド、アル、ウィンリィ、ピナコ。彼らを危険に晒したくないから、何を知っていようと話す事は出来ない。マスタング自身含め旅先で出会った人々を巻き込みたくないから、彼らに話す事は出来ない。
恐らく、ヒューズ殺害に大きく関与しているラスト。
親友を売り渡すような真似はしたくないから、話す気などさらさら無かった。
2011/11/20